1:まとめらいぶ:2017/07/22(土) 22:04:07.32ID:CAP_USER.net
日本での根強い「マイホーム信仰」。「家賃を払うのはもったいない」といって、結婚や
出産を機に住宅ローンを借りる人が多い。人気なのは高額なタワーマンションだ。しかし
日本の人口はすでに減り始めている。建物にしか価値がない「タワマン」を買って、本当
に大丈夫なのか。不動産市場のプロである牧野知弘氏の著書『マイホーム価値革命』
(NHK出版新書)から、ある30代夫婦のエピソードを紹介しよう。
先日、ある30代の夫婦から住宅購入の相談を受けました。
Dさん夫婦は都心の一流上場企業で共働き世帯、保育園に通う4歳と1歳の女の子の子ども
がいます。2人の年収を合わせると1000万円を超える共働き世帯ですから、どこから見て
もリッチなご家庭です。今、彼らが住んでいるのは、交通の便が良い家賃15万円の都心の
賃貸マンションで、広さは55平方メートルと4人家族にはやや手狭になりました。
そんなDさん夫婦が、子どもが増えて賃貸マンションでは狭くなってきたので、東京湾岸
部のタワーマンション(タワマン)を購入したいというご相談でした。その1室の価格は
7500万円ほど。資金計画をたずねると、こつこつ貯めてきた貯金が夫婦あわせて1000万
円強あり、これに住宅ローンで6500万円を借りて購入したいとの計画でした。
彼らは「ゆとり世代」に近い年齢です。
中略
「ええ、たしかにローンは長いですね。35年だと60歳を過ぎるので、退職時にもローン
が少し残る計算ですが、年齢が上がれば給料は増えるだろうし、残ったら退職金で返し
てしまえばいいかなと思いました。これからも生活費は切り詰めて、貯金ができたらそ
の都度、期限前返済をしていけば、なんとかなると思っています」
なるほど、もっともな理由です。続いて旦那さん。
「僕も人生、住宅ローンに縛られるのはちょっとどうかなとは思っていますが、家族の
ためですし。それにローンを支払っていけば、いずれ家は自分のものになるわけでしょ
う。湾岸部のこの場所は、2020年の東京オリンピック以降も発展すると聞きました。欲
しい人が増えて人気のエリアになれば、途中で物件を売って儲かるかもしれないじゃな
いですか。ま、それもありかなと思っているんです」
旦那さんはどうやら「投資」としても考えているようです。最後に、家を買わなければ
ならない理由をあらためて聞くと、奥さまはこう答えました。
「たしかに大丈夫かなという不安はあります。でも長期間で住宅ローンを組める今のう
ちに買っておかないと、このままずっと賃貸というのも不安なんです。だって、最近は
都心のマンション価格がどんどん上がっているし、家賃をいくら払っても自分のものに
は一生ならないわけでしょう。それに家族向けの賃貸住宅は、ろくなものがないという
じゃないですか。年をとると大家も貸してくれないといいますし。もし住宅ローンを組
むのなら、若いうちからのほうが、返済は結果的に楽だと思ったんです」
私はこうしたDさん夫妻との会話に、実は驚きを禁じえませんでした。世の中のあらゆる
情報を瞬時に取り入れて、それを活用しながら「しなやかな」生き方をするネット世代で
す。まさに「これから世代」ともいえる彼らが、家については意外と「マイホーム」の典
型的な発想にとどまっていたのです。
ローン総額は9800万円になる
日々の買い物には一切の無駄なく、常に合理的な判断を下していく彼らが「何のために家
を持つのか」という問いに対して、「今のうちに持っておいたほうがいい」という曖昧な
視点しかありません。しかも35年も先のことを「まあ大丈夫だろう」という不確かな確信
で、これからの人生で稼ぐおカネの大半(金利分を含めると9800万円!)を投じようとし
ているのです。いったい何がそうさせるのでしょうか。
優しく笑う夫婦を見ながら、この「マイホーム」という言葉の持つ魔力を考えさせられま
した。その後、彼らは念願のタワマンの一室を手にしたと聞きます。
「家賃を払うのはもったいないから、家は買ったほうが得」。そんな理屈でマイホームを
購入してしまうことは、非常に危険なのです。
【PRESIDENT Online】
http://president.jp/articles/-/22551
【イメージ画像】
出産を機に住宅ローンを借りる人が多い。人気なのは高額なタワーマンションだ。しかし
日本の人口はすでに減り始めている。建物にしか価値がない「タワマン」を買って、本当
に大丈夫なのか。不動産市場のプロである牧野知弘氏の著書『マイホーム価値革命』
(NHK出版新書)から、ある30代夫婦のエピソードを紹介しよう。
先日、ある30代の夫婦から住宅購入の相談を受けました。
Dさん夫婦は都心の一流上場企業で共働き世帯、保育園に通う4歳と1歳の女の子の子ども
がいます。2人の年収を合わせると1000万円を超える共働き世帯ですから、どこから見て
もリッチなご家庭です。今、彼らが住んでいるのは、交通の便が良い家賃15万円の都心の
賃貸マンションで、広さは55平方メートルと4人家族にはやや手狭になりました。
そんなDさん夫婦が、子どもが増えて賃貸マンションでは狭くなってきたので、東京湾岸
部のタワーマンション(タワマン)を購入したいというご相談でした。その1室の価格は
7500万円ほど。資金計画をたずねると、こつこつ貯めてきた貯金が夫婦あわせて1000万
円強あり、これに住宅ローンで6500万円を借りて購入したいとの計画でした。
彼らは「ゆとり世代」に近い年齢です。
中略
「ええ、たしかにローンは長いですね。35年だと60歳を過ぎるので、退職時にもローン
が少し残る計算ですが、年齢が上がれば給料は増えるだろうし、残ったら退職金で返し
てしまえばいいかなと思いました。これからも生活費は切り詰めて、貯金ができたらそ
の都度、期限前返済をしていけば、なんとかなると思っています」
なるほど、もっともな理由です。続いて旦那さん。
「僕も人生、住宅ローンに縛られるのはちょっとどうかなとは思っていますが、家族の
ためですし。それにローンを支払っていけば、いずれ家は自分のものになるわけでしょ
う。湾岸部のこの場所は、2020年の東京オリンピック以降も発展すると聞きました。欲
しい人が増えて人気のエリアになれば、途中で物件を売って儲かるかもしれないじゃな
いですか。ま、それもありかなと思っているんです」
旦那さんはどうやら「投資」としても考えているようです。最後に、家を買わなければ
ならない理由をあらためて聞くと、奥さまはこう答えました。
「たしかに大丈夫かなという不安はあります。でも長期間で住宅ローンを組める今のう
ちに買っておかないと、このままずっと賃貸というのも不安なんです。だって、最近は
都心のマンション価格がどんどん上がっているし、家賃をいくら払っても自分のものに
は一生ならないわけでしょう。それに家族向けの賃貸住宅は、ろくなものがないという
じゃないですか。年をとると大家も貸してくれないといいますし。もし住宅ローンを組
むのなら、若いうちからのほうが、返済は結果的に楽だと思ったんです」
私はこうしたDさん夫妻との会話に、実は驚きを禁じえませんでした。世の中のあらゆる
情報を瞬時に取り入れて、それを活用しながら「しなやかな」生き方をするネット世代で
す。まさに「これから世代」ともいえる彼らが、家については意外と「マイホーム」の典
型的な発想にとどまっていたのです。
ローン総額は9800万円になる
日々の買い物には一切の無駄なく、常に合理的な判断を下していく彼らが「何のために家
を持つのか」という問いに対して、「今のうちに持っておいたほうがいい」という曖昧な
視点しかありません。しかも35年も先のことを「まあ大丈夫だろう」という不確かな確信
で、これからの人生で稼ぐおカネの大半(金利分を含めると9800万円!)を投じようとし
ているのです。いったい何がそうさせるのでしょうか。
優しく笑う夫婦を見ながら、この「マイホーム」という言葉の持つ魔力を考えさせられま
した。その後、彼らは念願のタワマンの一室を手にしたと聞きます。
「家賃を払うのはもったいないから、家は買ったほうが得」。そんな理屈でマイホームを
購入してしまうことは、非常に危険なのです。
【PRESIDENT Online】
http://president.jp/articles/-/22551
【イメージ画像】